2021年4月10日朝刊Pacific Daily newsより抜粋、要約

 

編集部より:
グアムの住民は生活のあらゆる側面においてパンデミックの影響を受けた。私たちの未来はどのようなものになるのか?何万人もの人々が失業し、観光業は完全に停止し、生徒のいない学校と患者で溢れかえる病院を目にして一年、グアム島は再び動き出そうとしている。Pacific Daily Newsでは、グアム島の将来を見据えた記事を連載。今日は軍備増強について。

 

アメリカ海兵隊の移転があと数年で始まる。早ければ2025年には海兵隊員が移り住んでくると思われるが、このことはグアムの住民にとって何を意味するのか、アメリカ国防総省の移転計画はグアム島の将来にとって良い流れになるのかどうかについて意見が分かれている。

 

21歳のノーランさんにとって、米軍基地の建設は生活する上でマイナス面が多いと考えている。自然の景観が失われ、移動のアクセスが悪くなり、古代の文化的遺跡が破壊されているという。常に自然と共存して育ってきたことを考えると抵抗感は拭えないという。

 

グアム大学で政治学とチャモロ研究を専攻しているフローレスさんは、仲間の中にはミリタリー関連施設の建設を警戒する人が増えており、学内で大きな話題となっていると話す。フローレスさんは、22人のメンバーで構成されるグアム青年会議にも参加していますが、そこでもミリタリー関連の建設に批判的な意見が圧倒的に多いと述べた。

 

COVID-19の大流行にもかかわらず、増強工事は順調に進んでいる。デデド地区の主な基地とリティディアンの実弾演習場の建設は近々完成する。海兵隊基地キャンプ・ブレイズは、整地、ライフライン、道路、フェンスを設置する作業が85%完了している。さらに3つのバラック、基地管理棟、中央給油所の建設も進んでいるという。

 

リティディアンを拠点とするメイソン実弾演習場コンプレックスは、5つの砲台から構成され、4つは75%完成。最後で最大の5つ目の射撃場の建設契約は、今年中に完成する予定だ。

 

どちらのプロジェクトも、地域社会で継続的に論争が続くと思われる。リティディアン・コンプレックスは、1年のうち最大75%の期間、グアム住民のビーチや水域への立ち入りを制限する。また、このエリアには絶滅の危機に瀕しているSerianthes nelsoniiの木が唯一1本残っている場所でもある。さらに、飲料水源であるレンズ帯水層の近くにあり、島の健康を脅かすとも言われている。両プロジェクトサイトでの建設は、複数の古代の遺物や人骨が発見されたという報告もある。

 

Prutehi Litekyan-Save Ritidianなどのコミュニティ組織や一部の議員は、環境や文化への影響に何年も前から抗議してきた。しかし、計画は見直されることなく進んでおり、海兵隊員5,000人とその家族約1,500人の移転が2025年ごろから始まるとされている。

 

フローレスさんは環境への影響、5,000人の海兵隊員とその家族による社会的影響、インフラへの影響、たとえ連邦政府の土地であってもグアムにおいて軍事活動が拡大されることに落胆し、ある種の無力感を覚えているという。それが若い人たちの意識や抵抗感の源になっていると話す。世間で言われているようなメリットは短期的に得られるものであって、長期的には損失にとなると考えている。

 

メリット
軍や地域の人々は多くのメリットがあるという。軍備増強により約800の民間人の雇用が創出されると予想され、国防総省は、道路整備、上下水道のインフラ整備、グアムの港の近代化などに資金を提供した。また、1200万ドルの補助金を得て、グアム文化保管所を建設した。

 

Porky’s Barのマネージャーは、常連客の90%は軍人であるため、ビジネスの増加を期待している。軍人が増えることで、経済が回復し、景気が良くなるはずだと言う。


えっ、今頃?

日米両政府が普天間米海兵隊飛行場の辺野古沿岸への移設完了を条件に、在沖海兵隊の司令部要員約8000名と、その家族約9000名のグアム移転に合意したのは2006年。米議会の予算凍結をきっかけに、民主党の野田佳彦内閣のもとで新たな日米合意が結ばれたのが2012年。その結果、辺野古移設の進展にかかわらず、在沖海兵隊の戦闘部隊約4000人がグアムに移転することになりました。

 

かれこれ20年近く前から沖縄の海兵隊のグアム移転が話題になっているのですが、私の知る限りグアム島内の様々なコミュニティーで賛否が分かれ議論されたり、大規模な反対運動が起こったり、グアム住民のコンセンサスを得る住民投票などの機会が持たれた記憶がありません。この間にも何度も知事選もあり、候補者が海兵隊移転をテーマに選挙運動をしたという記憶のありません。もし、間違っていたら教えてください。なので私はずっと、グアムは連邦政府の決定を受け入れるんだ、と思ってました。

 

本来ならば、2006年の辺野古移転に日米両政府が合意する前からグアムでも様々な議論があって然るべき、またその議論があればコロナ禍で叫ばれる観光以外の産業育成が当時から始まっていたでしょう。さらに議論が進んでいれば工事に伴う遺跡や自然保護の観点からもグアムの意向も組まれた計画に落ち着いていたかもしれません。何れにしても、インフラ整備や設備が着々と完成していく段階で移設の是非を論じるのあまりにも遅いと思ってしまします。

 

当初の移転計画が発表された2006年頃、グアムの人口に占める軍関係者(家族含む)の割合をざっくり計算したら25%程度になるだろうと試算したことを記憶しています。その後移転人員が減らされたので割合は減っているとは思いますが、急激な人口増で交通渋滞の常態化など、インフラの問題点も指摘されていました。現在直面する米中の対立、北朝鮮問題、この20年で軍事的なグアムの位置付けもさらに重要性を増しているのでしょう。今議論すべきは様々な懸念材料を勘案して、どのようなグアムの未来を描くか…..市民を巻き込んだ議論がされるといいですね。

 

にほんブログ村 海外生活ブログ グアム情報へこちらもポチッとお願いいたします。
にほんブログ村

PVアクセスランキング にほんブログ村ランキンングにも一応参加し始めした。

この記事をSNSでシェア!